Vol.9 自己実現のためのポジティブ心理学(後半)

 TGT

TGT(Three Good Things)とは、就寝前にその日にあった『いいこと』を3つ、理由も添えて書くというものです。『いいこと』は、お昼ご 飯に食べたおにぎりが美味しかったなど、ささやかなことでも構いません。

夜寝る前に限って嫌なことを考え続けてしまうという人は少なくありません。いいことの場合はそれがあっても問題がないため見過ごされや すいですが、嫌なことはどうにか解決できないかと、つい考えてしまいがちです。そんなときには、あえていいことにも意識を向けてみま しょう。見過ごされていたささやかな「いいこと」に注意を向けることで、人生悪いことばかりではないということを思い出せるのです。

TGTの効果は実験でも証明されています。セリグマンの研究では、1週間TGTを行うことでその後半年間にわたってうつ病患者の幸福感が高ま り、抑うつ感が改善されたということが報告されています。

 ボランティア

ボランティア活動と言えば、人助けをイメージされる方が多いかもしれません。しかし、人を助けることで、実は自分も助けられている面が あります。

たとえば、ボランティアをすることでウェルビーイングが高まることが報告されています。ただし、ボランティア活動はたくさん行えばよい というものではありません。週2~3時間までは活動時間が長いほどウェルビーイングも高まりましたが、それ以上ではウェルビーイングへの 効果はかえって低くなることがわかっています。適した時間は人それぞれ違います。あくまでも自分にとって無理のない範囲でボランティア をすることが大切だと言えます。

ボランティア活動の対象者は、地域の子ども から子育て中のママ、高齢者などと幅広いで す。活動内容も、話し相手やレクリエーショ ン、絵本の読み聞かせなど様々です。あなた が興味を持てる活動がきっと見つかるでしょ う。

いかがでしたでしょうか。ポジティブ心理学の知見は、自分らしい満ち足りた幸福感や自分自身の強みに気づくことの大切さを教えてくれま す。自分らしい幸福感や強みがわかりにくい場合には、ぜひともTGTやボランティア活動を試してみてください。特にTGTは毎日のいいことを 積み重ねていくことなので、何が自分にとって心地よく、幸せ感をもたらすのか、自分が何を求めて生きているのかを知る手助けとなるで
しょう。

病気の有無に関係なく、自分らしい人生を生きていくことは簡単ではありません。自然体な自分のまま楽しいと思えること、夢中になれるこ とを見つけ、それを大切にすることが自分らしく前向きな人生を送るポイントになります。

公認心理師 橋本 空

参考文献

Morrow-Howell, N., Hinterlong, J., Rozario, P. A., & Tang, F. (2003). Effects of volunteering on the well-being of older adults. Journal of Gerontology: SOCIAL SCIENCES, 58B, S137–S145.

Seligman, M. E. P. (2011). Flourish. InkWell Management, LLC, New York.(セリグ マン M. 宇野カオリ(訳) (2014). ポジティブ心理学の挑戦"幸福”から“持 続的幸 福”へ 株式会社ディスカヴァー・トウエンティワン)

Seligman, M. E. P., Steen,T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005). Positive psychology progress: Empirical validation of interventions. American Psychologist, 60, 410-421.

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