Vol.9 自己実現のためのポジティブ心理学(前半)

ステージ診断を受けていただいた皆さんは、ご自身がどういった心理ステージにいらっしゃるかを把握できたかと思います。今回は一人の人間として前向きな人生を歩んでいくために有効なポジティブ心理学の知見や技法をご紹介いたします。

今回ご紹介するのは以下の4つです。

  • 身体的・精神的・社会的に満たされた状態「ウェルビーイング(幸せ)の5つの要素」
  • 自分の長所を活用し伸ばしていく「特徴的強みエクササイズ」
  • 就寝前に3つのいいことを書くだけで充実した日々を送る「TGT」
  • 人助けは自分助けでもある「ボランティア」

 ウェルビーイング(幸せ)の5つの要素

誰もが幸せになりたいと願っていると思います。しかし、改めて考えると幸せのとらえ方は人によって幅がありそうです。

ウェルビーイング(幸せ)の要素として、ポジティブ心理学の創始者であるセリグマンは以下の5つを挙げています。

1ポジティブ感情

ポジティブ感情は嬉しい、楽しい、安らぐ、面白い、感動、感激、感謝、希望など明るい感情のことです。嬉しい、楽しい、安らぐといった自分の感情だけではなく、感謝など他の人に向けた感情も含まれます。

2エンゲージメント

エンゲージメントとは、物事への積極的な関わりのことです。何かに没頭したり没入したり、熱中したり、夢中になったりしている状態のことです。何かに没頭しているときは、そのことだけを考えていて、その時は「楽しい」という感情はあまり意識しないかもしれませんが、後で「楽しかったなぁ」と思いだしたり、充実感が得られたりすることがあるでしょう。このように時間を忘れて何かに取り組んでいる状態が、エンゲージメントです。

3意味・意義

意味・意義とは、人生の意義の自覚のことで、社会貢献、利他行為、宗教、壮大な自然に触れることなどが挙げられます。自分は何のために生きているのか、自分よりも大きな存在との関係を意識し、畏敬の念をもったりするような感覚です。大自然に触れて感動したり、パワースポットの中で心が洗われた気持ちになったりする感覚がイメージしやすいかもしれません。

4達成

努力をして何かを達成したり成果を得ることです。何か目標を持って努力し、その目標を達成した時の「できた!」という満足感や充足感、また、「自分はある行動を実行できるぞ!やり遂げられるぞ!」と信じられる感覚のことです。

5他者との良い関係性

援助、協力、意思疎通を通じて良好な人間関係を構築していくことも、ウェルビーイング(幸せ)の不可欠な要素です。家族や友人、信頼できる職場の人など、大切な他者との付き合いを通じて、安心感や楽しい気持ちを感じる人は多いことでしょう。

ふだんからこれら5つの要素のどれを特に重視しているかを意識することによって、今の自分の幸せに強く関係するものが何かを知ることができます。

 特徴的強みエクササイズ

特徴的強みとは、簡単にいえば自分の長所のことです。特徴的強みエクササイズでは、自分の長所を見つけ、それを伸ばすための活動(エクササイズ)を行います。そうすることで、「これが本来の自分だ」という本来感や、ポジティブな感情を高めることができるのです。強みを活用した活動であれば、たとえ疲れているときでも活力を感じながらイキイキと進めることができるでしょう。

自分の長所を客観的に把握する一つの方法として、「VIA強みテスト」というアンケートがあります。「VIA強みテスト」には創造性や勇敢さ、親切心などを含む24種類の強みカテゴリーがあります。これまで考えたことのない強みが自分にはあるかもしれません。また、自分の長所を知ること自体に、ポジティブな気持ちを高める効果があります。

自分の強みが分かったら実際にその強みを活かしてみましょう。強みを具体的に活かすエクササイズの内容は、たとえば以下のように、予め決めておくとよいでしょう。

  • 創造性の場合…2時間ほど絵を描いてみる
  • 自己コントロールの場合…晩にテレビを見てダラダラするのではなく、散歩に出かけてみる

エクササイズを行ったときに時間が経つのを早く感じたり、夢中になれたのなら、そのエクササイズはあなたにとって有用だと思われます。

(後半に続く)

公認心理師 橋本 空

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