Vol.4 ネガティブ感情のコントロール(前半)

ステージ診断を受けていただいた皆さんは、ご自身がどの心理ステージにいらっしゃるかを把握できたかと思います。今回は日々の生活の中で直面するネガティブ感情をコントロールするための技法をご紹介いたします。

MSの診断が付いたとき、「これからどうなるんだろう」と不安になったり、「どうして自分が…」と落ち込むこともあるかと思います。診断が付いたときに多くの人が通る道とはいえ、ネガティブ感情は辛いものですし、そうしたストレスによって、症状を悪化させてしまう恐れもあります。

そういったネガティブ感情を和らげるのに役立ってくれるのが心理学的技法です。今回ご紹介するのは以下の4つの方法です。

  • つらい出来事を文章にすることで自分の人生の一部として理解する筆記表現法
  • 気分に合った音楽に浸ってスッキリする音楽療法
  • パートナーや家族と語り合うことで感情を発散させ、思考を落ち着かせる自己開示
  • MSを知らないことによる不安をなくす情報収集

筆記表現法

多くの患者さんにとって、「自分がMSを患った」という現実を受け入れることは簡単なことではないと思います。いっそ忘れてしまいたいと思う人もいるでしょう。しかし、考えないようにすればするほど、嫌な事実やネガティブ感情は頭に浮かんでしまうものです。この現象は皮肉過程理論と呼ばれます。何度も頭に浮かんでくる原因は、「どうなるんだろう…」と沸き起こってくる不安です。そのため、診断のショックと向かい合うのには、現実と向き合うことが大切になります。

MSを患った現実と向き合うのを手助けする方法のひとつに、筆記表現法があります。筆記表現法とは、ストレスフルな出来事を日記のように文章にするセルフケアの方法です。どんな出来事であっても意味のあるものとして自分の人生というストーリーのなかで解釈できるようにしたいという願望が、人間にはあります。しかし、MSの診断のように強いショックを受ける出来事は、「どうして自分が⁉」と困惑し、自分の人生の一部として受け入れることが難しい場合があります。そこで、自分の頭の中にある不安や困惑の気持ちや考えを目に見える文章に表現し、整理することで、自分の一部として受け入れやすくするのです。

筆記表現法では、ストレスとなった出来事を4日間続けて毎日15分書きます。文章を書くときには、読みやすさや時系列などはあまり気にせず、とにかく書きましょう。その時の思考や感情をしっかり書くと、自分の体験として理解しやすくする効果が高まると言われています。

しかし、つらい出来事についての感情や考えの文章を書くということは、その出来事を再び体験するようなものです。当時のつらい感情がよみがえるため、文章を書いた直後数時間は一時的につらい思いをする可能性があるので、少しずつ無理のない範囲で試しましょう。

音楽療法

明るい音楽を聞けば気分が上がり、悲しい音楽を聞けばしっとりした気分になる人は多いと思います。この音楽が気分に与える影響を使うことも、ネガティブ感情をコントロールする方法のひとつです。自分の好みの音楽は、音楽療法の効果を促進させるため、音楽が好きな人には音楽療法が特に適しています。

ただ音楽を聞くだけでも効果があるのか疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、リラックスして音楽を聞くことは受動的音楽療法と呼ばれ、きちんとした音楽療法のひとつです。

受動的音楽療法のコツは、気持ちを代弁してくれる音楽を選ぶことです。多くの人が、失恋したときには失恋ソングを聞いてその世界に浸ります。このように、自分の感情に合った雰囲気の音楽を聞くことが大切です。音楽の種類は何でも良いので、自分の好きなジャンルを聞きましょう。自分の好みではない音楽を聞くと、音楽療法の効果は半減してしまうためです。悲しみにどっぷりと浸ってスッキリした気分になったら、少しずつ気分を立て直していくために徐々に明るい音楽を聞いていきましょう。

(後半に続く)

公認心理師 橋本 空

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