Vol.6 周囲の人とのコミュニケーションのための行動のコントロール(後半)

傾聴

コミュニケーションは自分の意見を主張するだけでは完結しません。相手の話にも耳を傾け、考えや気持ちを理解する必要があります。心理学には、返報性という概念があり、親切には親切を返すというように人間はお返しするようにできています。相手の話をきちんと聴くことで、相手からもあなたの話をきちんと聴いてもらえるでしょう。話を上手に聴くポイントは、以下の3つです。

1相槌をうつ

「ふーん」、「そうなんですか」などの相槌をうたれると、相手は「しっかり聴いてくれている、分かってもらえている」と感じ、話をしやすくなります。時には、「〇〇だったんだ」に対して「〇〇だったんですね」と同じ言葉を返したり、「その後、どうなったんですか?」と質問するのも、上手に聴くスキルです。

2相手に関心があることを示す

相手の話の内容に興味が沸かないこともあると思います。しかし、そのことを伝えると、話のテーマではなく、相手に対しても関心がないと誤解される恐れがあります。そのため、関心がないテーマの話の場合は、「あなたは〇〇のどういうところが好きですか?」などと相手がなぜそのことに関心があるのかを尋ねてみてはいかがでしょうか。きっと相手は自分に関心を持ってもらえていると感じるでしょう。

3時には、自分のことも少し話す

返報性の原理により、一方だけが相手に何かするという状態が続くと、関係がぎくしゃくしてくる場合があります。そのため、時には自分の考えや意見を言うことも重要です。そうすると、さらに相手は話をしやすくなりますし、あなたの考えを理解しようとしてくれるでしょう。

アイコンタクト

メラビアンの法則によると、会話の情報源の55%は非言語的情報と言われています。特に視線は重要な役割を担っています。例えば、相手がよそのほうを向いて会話をしていたら、たとえ相槌を打ってくれていても、自分の話をきちんと聴いてくれていない印象を持つでしょう。このように、会話でのアイコンタクトには「あなたと会話をしています」という印象を相手に伝えるのです。

ただずっと相手を見ていると、「見つめてられている」という恋愛的印象や「にらみつけられている」と攻撃的印象を持たれるなど、相手に居心地の悪い思いをさせたり誤解されてしまうことにもなりかねません。とはいえ、下向きがちだったり、あまり相手の目を見ないのは、今度は会話をしたくないととらえられてしまうおそれがあります。イギリスの研究によると、適切なアイコンタクトは1回につき3.3秒ほどですが、日本人はシャイな方が多いので、もう少し短くてもよいと思います。なお、相手の目を見ると緊張してしまうという方は、眉の間を見るようにするとよいでしょう。

NGなノンバーバル・コミュニケーション

会話するうえで、NGなノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)があります。たとえばあなたが腕組みをする癖があったとして、その様子をみた人は、集中して考え事をしているから話しかけてはいけないといった拒絶的なイメージを抱くかもしれません。このように自分の行動が意図しない方向に作用していることがあるので、今一度自分の癖を見直してみると、スムーズなコミュニケーションができることもあるでしょう。

代表的なNGなノンバーバル・コミュニケーションとして、以下の2つがあります

1

ほどほどの声の大きさで話すと、メッセージが伝わりやすいです。小さい声で話すとどんどん自信がなくなって自分の気持ちを伝えられなくなりますし、反対に、大きな声は威圧的で相手から嫌だなと思われ受け入れてもらいにくくなってしまいます。

また、会話するときに、「あまり気にしないでほしいのですが…」などと前置きをつけることがあるかもしれません。相手への配慮や遠慮から言っていると思いますが、これは「自分の意見は無視してよいです」という認識を相手にさせてしまう恐れがあります。そのため、特に大切なことを相手に伝えたいときにはこのような前置きは控えた方がよいでしょう。

2表情

話している内容と表情が一致していないと、内容が伝わりにくくなります。愛想笑いをしてしまう癖のある人は、特に注意しましょう。たとえば何かを強く断りたいときに、言葉ではNoと言いながらも、愛想笑いしていては表情ではYesと伝えていることになり、意思が相手にうまく伝わらないでしょう。メッセージと表情は一致させることが大切です。

いかがでしたでしょうか。周囲の人など自分の意見や要望を伝えるためには、もちろん伝え方も大事です。しかし、相手の気持ちを知るための傾聴や、アイコンタクトをはじめとするノンバーバル・コミュニケーションも工夫することで、相手はよりいっそうこちらの話に耳を傾けてくれるようになるでしょう。

公認心理師 橋本 空

参考資料

Binetti, N., Harrison, C., Coutrot, A., Johnston, A., & Mareschal, I. (2016). Pupil dilation as an index of preferred mutual gaze duration. R. Soc. open sci.3: 160086.

http://dx.doi.org/10.1098/rsos.160086

平木典子 (2012). よくわかるアサーション自分の気持ちの伝え方 主婦の友社

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