SHINAYAKAプラス Vol.1 食べることの心理学

食べ物には、栄養摂取といった意味合いを超えた大きな魅力があります。食べ歩きや料理作り、見映えの良い料理の写真の共有など、食べ物 にまつわる趣味は多いですし、人が集まる行事に食事は欠かせません。これらのことから食べ物が私たちの生活をいかに彩っているかがよく わかるかと思います。そんな食べ物について心理学的に考えてみましょう。

気持ちを前向きにしてくれる食生活とは

好きな食べ物や美味しい物を食べると、幸せな気分を感じたり、嫌な気持ちが軽くなったりしたことはありませんか?そんな食生活の「心の 栄養」に関する研究があります。オーストラリアで行われたある実験です。食生活における割合を、全粒粉のパンやパスタ:1、肉や魚など のたんぱく質:2、野菜:2弱、果物:1として3週間ほど続けることで、生活の中で落ち込むことが減ったそうです。肉や魚を多めに、野菜も 欠かさず食べ、ご飯類や果物は控えめに、といったバランスを意識すると良さそうですね。

実は料理も気分転換になる

食べることだけではなく、料理にも望ましい効果が期待できます。食材を切ったり、手でこねたりといった、個々の動作に意識を集中する と、不安な気分が和らげることや、ポジティブな感情を高めることができると言われています。

子どものころ、泥遊びや粘土遊びが楽しかったという方もいるかもしれません。料理を作るときに手や指の動きから得られる刺激は、これら と似ているところがあり、脳を活性化させ、ポジティブな気持ちを高めてくれると考えられます。ハンバーグやクッキー生地をこねて、童心 に帰ってみるのもよいかもしれません。

食べることと料理をすることに共通して一番大切なことは、「しなくてはいけないもの」といった義務感を極力もたないことです。「せっか くならもっと楽しもう」「ちょっと試してみようか」というくらいの気持ちで、いつもの食事や料理に少し前向きに向き合ってみると、いつ もより心地よい日々を過ごせるかもしれません。

公認心理師 橋本 空

参考文献

Francis, H. M., Stevenson, R. J., Chambers, J. R., Gupta, D., Newey, B., & Lim, C. K. (2019). A brief diet intervention can reduce symptoms of depression in young adults – A randomised controlled trial. PLoS One. 14(10):e0222768.

木村滋子・久住 武 (2019). 料理作業が作業者の不安と気分に及ぼす影響 心身健康科学, 15, 1-12.

作成2021年3月

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