新型コロナウイルスの影響により、マスクをつけ、ソーシャルディスタンスを取って人と接するという期間がありました。その生活の変化にすっかり慣れてしまった方も、なかなか慣れることができない人もいらっしゃるかもしれません。改めて、人との距離が心に及ぼす影響などについて考えてみませんか?
人との心地よい距離感は、相手との関係によって変わります。会社の取引先の人となら2mぐらい離れていても何とも思わないかもしれません。でも、友達と2mも離れて世間話をするとなると、「何だか遠いな」、「もっと近くで話したいな」などと感じることもあるでしょう。このように、気持ちが近しい人ほど、物理的な距離も近いというのが、自然な心のあり方です。
したがって、距離を取ったコミュニケーションによって、親密感と距離の関係がうまく取れなくなり、難しさを感じるのは当然と言えるかもしれません。例えば、冬場にマスクをつけている時には、相手の表情や感情が分からず、心の距離の遠さを感じる事もあるように思われます。
では、人とのコミュニケーションをうまく行うにはどうすればよいでしょうか。ポイントとなるのは「返報性」です。これは、親切には親切で返すといったものです。 例えば、アイコンタクトにおける返報性。きちんと相手の目を見てコミュニケーションを取ることで、「私はあなたに関心を持っていますよ」と伝えることができ、相手からもあなたに関心を持ってもらうことができるでしょう。マスクをしても隠れない「目」は、コミュニケーションで意識していきたいところです。
リモートワークのような状況であれば、メールやチャットなどのメッセージにちょっとした雑談をつけるのもよいですね。そうすることで、「私はあなたに心を開いていますよ」と伝えることができ、相手からも心を開いてもらう効果を期待できます。また、リモートワークではコミュニケーション自体が減り、孤独感を感じやすい場合もありますので、雑談メッセージをもらうことで相手の気持ちがラクになるといった効果も期待できます。
今後も私たちの生活や仕事を取り巻く環境は、変わっていくことが予想されます。その変化に慣れるまでは、とまどうこともあるかもしれません。そんなときでも、「相手を理解したい」、「つながりを大切にしたい」といった私たちの中の変わらない部分に立ち返り、ひと工夫をしてみると、きっとうまくいくと思います。
公認心理師 橋本 空