SHINAYAKAプラス Vol.8 誰かの役に立つことの心理学

「人はどうすれば幸せになれるか」。これは誰にとっても関心の高いテーマだと思います。このテーマについて国内外で行われた調査では、「幸せになるため」に最も影響力が大きいとされた要因は「誰かの役に立つ」という行為だったそうです。人のために役に立つことがなぜ幸せにつながるのでしょうか。心理学的には、以下の3つの欲求が満たされるからだと言えます。

1関係性がより良好なものになる

人とつながりを持ちたいというのは、人間なら誰しもが持っている欲求です。他の人をサポートすることで、一時的なものであるにしろ、その人と「つながり」を持つことができ、関係性の欲求を満たすことができます。

2有能感が得られる

日本人には、自分の頑張りを謙遜して低く評価してしまうことも多く、なかなか有能感を実感する局面が少ないかもしれません。しかし、誰かを支援することは「自分は誰かの役に立っている」ことを自分自身に証明できます。自分の行為によって他の人が助かり、感謝してもらえるなど、何らかの結果がもたらされることで有能感が高まり、幸福感を感じることができます。

3自律性が実感できる

自律性とは、自分で自分をうまくコントロールできている感覚をもつことで、人が幸せを感じる条件の一つでもあります。自分の意志で、義務感などを感じずに行う誰かへの支援はまさにこの自律性を実感できる絶好の機会でもあります。

誰かの役に立つという行為が自分のためになる。意外に思うかもしれませんが、これらの欲求を満たされることから、最終的に自分のための行為でもあるのですね。ベビーカーのためにエレベーターの順番を譲る、自分の持っている知識を人に伝える、不要になったものを格安で譲るといったことから、本格的なボランティア活動まで、人のためになることは無数にあります。初めは躊躇するかもしれませんが一歩踏み出してみると、満たされた気持ちが感じられるかもしれません。

公認心理師 橋本 空

参考文献

川合伸幸 (2014). ヒトが他者を助けるのは生得的で普遍的であることを示す最近の社会心理学・発達心理学・神経科学研究の紹介 認知科学, 21, 269-276.

Morrow-Howell, N., Hinterlong, J., Rozario, P. A., & Tang, F. (2003). Effects of Volunteering on the Well-Being of Older Adults. The Journals of Gerontology, 58, S137–S145.

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