SHINAYAKAプラス Vol.7 小説や映画などに夢中になってみること

皆さんは今夢中になっている趣味などはありますでしょうか。人によってその対象は様々だと思いますが、中でも小説、映画などで物語を楽しむことに夢中な方は多いかもしれません。そこで今回は、物語に夢中になることの心理学的な効果についてお話したいと思います。

登場人物との感情の同一化

物語の楽しみ方はもちろん自由なのですが、主人公の置かれた状況や心情に共感したり、場面の空気感を想像したりすると、物語の世界により深く入り込むことができます。

物語に深く入り込むと、「読者、視聴者としての私」から「物語の登場人物」へと自分を置き換えることができます。楽しい世界や憧れの世界に入り込むことで、普段は体験できない感情を味わえるでしょう。スリリングなアクションものやミステリーものなどで非日常を味わうのもよいですが、涙が出るほど切なかったり感動したりするものもおすすめです。泣くことでストレスを解消することができ、気分をスッキリさせることができます。

現実世界から離れられる

物語の世界に入り込む体験は、現実逃避に過ぎないと思われる方もいるかもしれません。確かに物語と現実とは別のものではありますが、物語に入り込むことで、現実との間に距離を置くことができます。そうすることで、ストレスの影響が和らぎ、現実をより冷静にとらえ直すきっかけが得られます。日常生活で少し疲れた時には、物語の力を使って、少しの間でも現実から離れる体験をもつことは、私たちの心を癒してくれることでしょう。

物語から信念や価値観を学ぶ

物語に入り込むことで、そこに描かれる登場人物や作者の信念や価値観を学ぶこともできます。幼いころに触れた物語の登場人物の言葉が今も忘れられないという方がいるかもしれません。そのように感情を揺さぶられながら触れる信念や価値観は、時としてあなたの生き方や価値観に大きな影響を与える可能性をもっています。

物語に入り込み、そのひとときを楽しむという行為は、心を癒し、豊かにするために大昔から変わらず人間が活用してきた財産と言えるでしょう。こうした時間を気軽に楽しみながら、イキイキとした日々を送りたいですね。

公認心理師 橋本 空

参考文献

小山内 秀和・楠見 孝 (2013). 物語世界への没入体験―読解過程における位置づけとその機能― Japanese Psychological Review, 56, 457-473.

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