SHINAYAKAプラス Vol. 4 自然に触れることの心理的効果

日本は、春の桜、夏の海、秋の紅葉、冬の雪など四季折々の自然に恵まれた国です。ですが普段、特に都市部などで生活をしていると、自然についてあまり考える機会がない方もいるかもしれません。その一方で、「自然は私たちにとっていいもの」と何となく感じていたりもしないでしょうか。今回はそんな自然に触れることについて考えてみましょう。

なぜ自然に触れると癒されるのか

私たちは生活のほとんどの時間、必要なものを選んだり、不要なものや危険なものを避けたりするなど、常に何かに注意を向けている状態だと言えます。その間、脳が常に刺激され、働き続けている状態であり、気づかないうちに疲れを感じています。

一方、透き通るような大空を眺めたり、色鮮やかな植物を見ていると、私たちはその大きさや美しさに魅了され、癒されることがあります。このときの私たちは、周囲に注意を向け続けている時とは異なり、ぼんやりとそれらを眺めている状態です。注意が緩むことで気持ちがラクになり、リフレッシュすることができます。こうした考え方は注意回復理論というもので、ここから自然に触れることの癒し効果が理解できます。

植物や花なら、家のなかにいても自然を楽しめる

そうはいっても、外出をして自然に触れにいくことが難しい場合も多いかと思います。そんなときにおすすめしたいのが、植物、特に花による癒しです。

2020年に行われた心理学の実験によると、花の画像を見るほうが、青空の画像やイスの画像を見るよりも、ストレスから早く回復できることがわかりました。この効果についても、先ほどの注意回復理論に基づいて、花を見ることによってストレスから注意を逸らすことができたからだと解釈することができます。自室などに花を飾ってみると、いつもより気分が軽く感じられるかもしれません。

私たちが思う以上に、人の脳はずっと働いています。疲れたなと思ったときは、窓から見える空や木々などを眺めてみるだけでも、気持ちがラクになるかもしれません。

公認心理師 橋本 空

参考文献

Mochizuki-Kawai, H., Matsuda, I., & Mochizuki, S. (2020). Viewing a flower image provides automatic recovery effects after psychological stress. Journal of Environmental Psychology, https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2020.101445

芝田征司 (2013). 自然環境の心理学-自然への選好と心理的つながり,自然による回復効果- 環境心理学研究, 1, 38-45.

作成2021年3月

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